受験に役立つコラム

兵庫県下・女子校の「英語教育」

2022年6月10日
執筆:日能研関西 進学情報室 室長 森永 直樹氏

 私立中高一貫校への志望理由を、日能研の生徒へのアンケートによるランキングで見ると、「英語教育への期待」の項目が上位にあがってきています。以前から女子に見られる傾向ですが、小学校から英語を学ぶ時代になったこともあり、男子でも上昇しています。

 学校のタイプ別で言えば、「大学付属校」や「女子校」を志望する際に強くみられる傾向です。

英語教育といえば兵庫の女子校。今回は兵庫の女子校から英語教育が特色の4校を紹介いたします。

●松蔭「GS(グローバル・ストリーム)」「GL(グローバルリーダー・コース)」

 はじめに紹介するのは、兵庫の女子校、松蔭中学校・松蔭高等学校です。

「英語に強くなる松蔭」のキャッチコピーで学校改革を進め、2020年中学入学生より、「中学校グローバル・ストリーム(以下GS)」とそれに続く高校課程「グローバルリーダー・コース(以下GL)」が設置されました。

 中学GS、高校GLは、国内外で活躍する人材を育成するために、従来の学校の枠に留まらない多角的な教育コンテンツを積極的にカリキュラムに組み込み、他校にはない特色あるグローバル教育を展開するものです。以下、その教育の特徴を一部紹介します。

 一つ目は、「ICT English」です。ICT機器を活用し、オンラインでの外国人との英会話とAIによるスピーキングに取り組みます。この授業は、中高6年間毎日継続され、中学段階(GS終了時)で日常会話に不自由しない英語力を、高校卒業(GL終了時)でCEFRB2レベル以上、英検準1級・1級レベルの英語力習得が図られています。

 二つ目は、インターナショナルスクール提携授業「Global English Saturday School」です。この授業は中学GSで毎週土曜日(年間約32日)に実施されます。英語イマージョン環境のなかで、インターナショナルスクール同様のプロジェクト型学習が行われています。

 このほかにも「GL探究」や「人間力養成講座」などこれからの時代に必要とされる力を養成する講座や、様々なプログラムの海外研修旅行が用意されています。

 高校卒業後の進路としては、国内の国際系学部や併設大学の英語教育専門課程、海外大学への進学が想定されます。

 入学後の教育を見すえ、入試は英語1教科で行われています。この入試も定着してきており、今後さらに注目されそうです。

●武庫川女子大学附属・・・「生きた英語を学ぶ」がコンセプト

 2校目に紹介するのは武庫川女子大学附属中学校・高等学校です。

 多方面で社会に貢献できるグローバル人材を育てることを目標に、創造グローバルコースと創造サイエンスコースを2017年からスタートさせています。以前から英語教育のクオリティは高く評価されており、phonicsや多読の実践、ネイティブ教員の単独授業などにより、4技能の力を最大限引き出し、伸ばす授業、演習を実践してきました。

 2017年からは「楽しみながら、生きた英語を学ぶ」をコンセプトに中学時代の習熟度別授業や高2からの、SATやTOEFL、GTECの受検対策のための「検定英語」という学校設定科目の設置で、武庫川女子大学英文科及び海外大学への進学に必要な学びが育まれています。

 さらに充実した指導体制のもと、中学卒業時には英検準2級を、高校卒業時には英検準1級の取得を到達目標にかかげています。

 創造グローバルコースでは、高校で第2外国語が選択できるのも魅力のひとつです。中国語、韓国語、フランス語に興味のある生徒が積極的に授業に参加し、力をつけています。

 アメリカ、オーストラリアを始め6カ国の短期交換留学や海外研修も充実しており、外国の大学への進学、さまざまな国に留学するなど、世界へはばたく生徒が増えてきそうです。

●神戸国際・・・充実の海外研修でさらに英語力が磨かれる

 3校目に紹介するのは神戸国際中学校・高等学校です。

 創立以来、グローバル人材の育成に取り組む女子進学校です。中1から英語・仏語の2カ国語を必修とする外国語教育では、6名のネイティブ講師による対話型授業が中心です。それを実践する「応用英語プログラム」では、英語で音楽・美術を学ぶ「イマージョン教育」や、ネイティブ講師を囲んで会話を楽しむ「イングリッシュカフェ」など、日頃より外国語に親しみ、コミュニケーション能力の基礎を養う環境が整っています。

 カナダ・フランス・イギリスを巡回する海外研修、中3全員が3週間ニュージーランドでホームステイをする語学研修、高2全員での海外修学旅行など、充実した研修体制のもと、英語力に磨きをかけています。

 また英語や仏語のスピーチやプレゼンテーションにも同校は力を入れており、校内で実施されている「オラトリカル コンテスト」での生徒のパフォーマンスは迫力十分です。

表現力・発信力、そして積極性にも定評があり国際人育成としての第一歩となっています。

●神戸山手女子・・・山手大改革! 新コース「グローバル選抜探究コース

 最後に紹介するのが神戸山手女子中学校高等学校です。

 再建を託され2年目をむかえる平井校長に次年度から新設される「グローバル選抜探究コース」について伺いました。

〜目指す教育について〜
「世の中のグローバル化にあわせて、子どもたちもグローバル・マインドを磨き、他者と協働しながら一人ひとりの幸福を追求しつつ、社会貢献していかなければなりません。その土台を創るというのが本校の考え方です。グローバル化は、国際協力の重要性を再認識させてくれる一方、知的・経済的競走を加速させています。その意味で、各自のポテンシャルを最大限に発揮し、社会貢献できるようになるには背景知識を活用して、課題を見出し、論理的に思考・判断、解決に向けて適切に表現するスキルを生涯にわたって磨き続けることが重要で、その土壌を創り出すことが学校教育の役割だと思っています。今や人や情報が行き交い、自分とは異なる文化をもつ人々や自然と共存することが求められている時代です。だからこそ、異なる価値観や倫理観をもつ文化の多様性を受容する寛容さを育むことが大切であると同時に、自国の文化や伝統を深く理解し、尊重する姿勢を達成することが重要ではないでしょうか」

 この新コースには様々な特長がありますが、平井先生の専門でもある「英語教育」に力点が置かれて注目されています。

〜新コースでの英語教育について〜
「到達目標は、国内では国公立大学、有名私立大学、海外の大学とします。キャッチフレーズは[山手大改革:英語+EdTech+グローバル探究⇒進路満足度100%]。学校で英語に触れる時間の長さは1週間の授業と課外授業で10時間以上、担任はネイティブ教員+日本人教員の2人制でオールイングリッシュを基本とします。積み残し解消には、教師がファシリテーターとなり、EdTech教材を活用した個別最適学習(アダプティブ・ラーニング)を徹底。放課後は20時まで自習室の利用が可能です。評価はルーブリック評価を行い、学習履歴を積み上げます。探究の時間は、グローバル探究としてリニューアル、英語と音楽、美術、家庭科、理数系教科と組み合わせたイマージョン教育を導入し、楽しみながら勉強できる環境を提供します。夏期・冬期休暇中には、グローバル・イングリッシュ・キャンプ、集中講座としては、関西国際大学との連携やオンラインによる留学を進めます。さらに、校長特別保護者面談も組みこみ、生徒-保護者-学校の連携をさらに深めます。グローバル化、DX化に対応した教育実践を展開していきます。」

 英語に力点を置きながら、グローバル教育を展開する新コースですが、明確に進路実現まで見据えているところに、平井校長の本気度を感じます。

 

PROFILE 森永直樹(もりなが・なおき)

日能研関西 取締役。教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを経て2017年より現職。生徒への指導や保護者へのアドバイスを行うほか、私学教育、中学受験に関する講演などでも活躍。

 

 

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