受験に役立つコラム

2024年中学入試注目校

2023年8月31日
執筆:日能研関西 進学情報室 室長 森永 直樹氏

 

シン化する滝川中学校

今年の近畿2府4県の受験者数は、統一入試開始日の1月14日の午前で1万7279人となり、前年度より387人増加しました。
また、中学受験率(統一入試開始日の午前の受験者数÷近畿2府4県の小6児童数)は10.01%となり、前年度の9.74%から大きく上昇しています。中学受験率が10%台となるのは、2009年度以来14年ぶりです。

 私学志向が高まる中でむかえる2024年入試はさらに受験生が増え、中学受験率は過去最高に近づくと予想しています。
私学の教育内容に関心が持たれているため、学校改革をすすめているところがより注目されています。

 2022年から新コース体制がスタートし、その教育内容が評価される中で来年から共学になる滝川中学校を2024年入試の注目校として紹介します。

 滝川中学校は、神戸のみならず日本の発展に大きく貢献した実業家・瀧川辨三が1918年に設立した男子校で、「至誠一貫」「質実剛健」「雄大寛厚」の校訓のもとリーダーシップを育む教育を実践してきました。

伝統を守りながら、一方で早くから他校に先駆けて「サイエンス」と「グローバル」の両軸に重きを置く教育を行い、2022年以降は「医進選抜コース」「サイエンスグローバル一貫コース」「ミライ探究コース」の3コースで生徒の能力と可能性を伸ばし、独自のプログラムを通じて個々の「自主性」「協調性」「知識」が育まれています。

 「医進選抜コース」では最難関医学系大学・学部への進学を視野に入れた授業カリキュラムが展開され、医学部専門予備校と連携し、放課後学習が実施されています。  
 また、高い学力をつけるだけでなく、強い使命感と倫理観を備えた医療者になるための「人間力」を養うための取り組みにも力を入れています。具体的には、いのちをテーマにした探究活動や医大の見学などが予定されています。
 高い目標に向かっての手厚いサポートが評判で、既に難度の高いコースとなっています。
 
 「サイエンスグローバル一貫コース」では理数科目を重視したカリキュラムに加えて実践的な語学力を身につける指導が行われています。また中学3年生の3学期に3か月間行われるニュージーランドへのターム留学が特徴です。また、そこで得た経験と英語力を持続させるために、高校1年ではフィリピン・セブ島での海外語学研修、高校2年生の研修旅行では、シンガポール大学において英語でのプレゼンテーションなどが用意されています。
 「医進選抜コース」の次のレベルにあたるコースですが、一番人気があり滝川のシンボルとも言えるでしょう。

「ミライ探究一貫コース」は、まだ誰も答えを知らないような社会の課題を主体的に見つけ出し、解決に向けて導く「ミライを創る人」の育成を目指し、これまで以上に本格的な探究学習が実施されます。最終的には企業と連携した実践的な学びへと至る取り組みが予定されています。

 ここでとりあげたコースのうち、「医進選抜コース」と「サイエンスグローバルコース」が2024年から共学になります。難関のコースと人気のコースだけに注目されています。中でも私が注目しているのは次の2点です。

 一つ目は、男子校の共学化の1年目にどれだけ女子の志願者が集まるかという点です。他校の例を見て、志願者が多く集まるのは2年目からではないかという予想もされています。

 二つ目は「医進選抜コース」が女子の影響でどの程度難化するかという点です。

共学化が発表されたときに伺った下川校長の話を紹介します。
 「ジェンダーギャップ指数を見ても、日本は先進国の中でも下位に位置し、諸外国に対して遅れをとる一方です。また国内の企業でもまだまだ女性の能力をいかしきれていないのが現状です。本校が取り組んでいる《リーダーシップ教育》は、まさにこのような現状で《日本社会を元気にできる新時代のリーダー》を育んでいます。この教育プログラムを男子だけではなく女子にも提供したいと考えました。これまで男子校として培った本校の良さに、女子生徒が加わることで、お互いの良いところを伸ばし合い、学校全体としてプラスにできるチャンスにもなると捉えています。」

下川校長の話にもあるように、2022年からスタートした新コースに始まる学校改革構想に共学化が含まれており、そのコースコンセプトが女子の受験生にもマッチしたものになっています。

そのほか共学化にあわせて新教育棟の建築や人工芝のグラウンドなど教育環境が整備されていることもあって、女子生徒の学校説明会の参加者が学校の予想を大きく上回っています。

滝川中学校の新体育館(イメージパース)

新体育館(イメージパース)

滝川中学校のグラウンド人工芝化予定(イメージパース)

グラウンド人工芝化予定(イメージパース)

以上のことから、1年目からかなりの志願者数が集まり、「医進選抜コース」は確実に難化するとみています。

 2022年から進化を加速させている滝川中学校。ぜひ、生徒・保護者自身の目でその魅力を確認してください。かなりの回数の説明会が実施されていますが、すぐに締め切りになることもあるようなので、こまめに学校ホームページの情報を確認するようにしてください。

 

PROFILE 森永直樹(もりなが・なおき)

日能研関西 取締役。
教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを経て2017年より現職。
生徒への指導や保護者へのアドバイスを行うほか、私学教育、中学受験に関する講演などでも活躍。

 

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