●コロナ禍での中学入試
関西圏の中学入試(統一入試開始日)まであと2か月となりました。コロナ禍での2回目の入試となりますが、現状は10月に入って感染者数が急速に減少したこともあって、プレテストや最終の入試説明会などは制限なく予定通りに実施されています。
新型コロナウィルスの「第6波」の感染拡大が12月から1月にかけて想定されている(一部の報道)ことから、多くの学校では2021年入試と同様の対応を考えています。
1教室あたりの受験者数や、付き添いの保護者の人数制限、当日の保護者説明会の実施方法については、今年に準じた感染予防対策を重視した方法がとられます。
入試そのものの変更については、今年同様に「面接」が中止になっています。これは接触機会を減らすという感染予防対策なので、今後コロナが終息すれば復活すると思われます。
2021年入試では塾の先生による当日の朝の激励が「禁止」となる学校が多くありました。次年度入試は「最少人数で実施可」と変更する学校もあり、若干緩和されそうな雰囲気ですが、入試直前期の感染状況によってはこのムードも一変するかもしれません。
●今後、受験者数はどうなる?
昨年の新型コロナウィルス発生時には、2022年入試の受験生の多くが受験のための塾通いを始めていたため、大きな影響がないと見られていました。ところが実際は5年生から始めようとしていた生徒の進路変更や、コロナの影響で受験をやめるなど、ここにきて想定よりも受験生が減少する気配となっています。
現に学校を会場にして実施されている模擬試験の受験者数はわずかながらも減少しているところが多いと聞きます。
2021年入試の受験者数が17,079名に対して、2022年入試では16,900~17,000名あたりまで減少すると現段階では予想しています。
この減少傾向はもう1年続きます。中学受験は4年生から準備をはじめる生徒が多く、新型コロナウィルス発生のタイミングと重なったため、最も影響を受けています。その後回復傾向ではあるものの例年の受験者数には届かないとみられています。
ところが、コロナ休校期間中の対応の公私間の格差が顕在化したことで、私学志向が高まっており、今の4年生(新型コロナウィルス発生時は3年生)が受験する2024年入試では2021年基準を大きく上回る可能性があります。今後の動向が注目されています。
●2022年入試の注目校
全国から受験生が集まる灘中の2021年入試はコロナの影響もあり、関西圏以外からの受験生が減少しました。この傾向が2022年入試まで続くのかが注目されています。2021年の中学入試が問題なく実施できたことに加え、全国の感染状況が落ち着いている現状から、コロナ前の状況に近づくところまで回復してくると予想しています。
女子の難関進学校では四天王寺に注目しています。従来からの最上位コースの「医志」と2021年入試からの新コース「英数S」(医志と同レベル設定)の志望状況がどうなるかという点です。コース改編の初年度となった2021年入試では、「医志」を第一志望に選ぶケースが多かったのですが、しっかり告知ができたうえに、入学した1期生の状況も伝えることができる2年目の入試では「英数S」と人気が分かれ、難度が揃う結果となりそうです。
共学の難関進学校では大阪の高槻、兵庫の須磨学園の人気が高く、近年難化傾向にあります。2022年でもその状況は変わらず、少なくとも2021年入試と同程度の受験者数になることは確実です。
大学付属校では「関関同立」の付属校・系列校に人気が集中しそうです。傾向としては2021年入試に続き、「立命館」の付属校・系列校が目立っています。
立命館は受験者数が増加した翌年は減少するというような隔年現象がこれまでは見られましたが、2022年入試も変わらず多くの受験生を集めそうです。付属校の持つ魅力に加えて、先進性のある教育の中身が期待されています。他では、立命館宇治や立命館守山、初芝立命館も併願日程では注目されています。
立命館以外では、兵庫の関西学院と啓明学院の受験生が増えそうな気配です。安定した人気の両校ですが、コロナ禍で大阪や京都方面までの遠距離通学をさける動きも影響しているかもしれません。
トップ校以外では減少傾向にある女子校の中で、2021年入試で多くの受験者数を集めた大阪の「帝塚山学院」と京都の「同志社女子」の動向が気になるところです。帝塚山学院は女子校で最も多い志願者数を誇り、未来志向の女子教育を実践している点が高く評価されています。同志社女子は同志社系付属校の唯一の女子校として人気があり、京都以外からの受験生が増えています。両校とも人気が継続しているので、2021年入試の反動はなさそうです。
その他の注目校として2022年から新コース制をとる3校を紹介します。
従来からのコース制を再編する滝川の「医進選抜コース」が注目されています。本気で医学部医学科を目指す6年間のカリキュラムが期待されています。
近年大学進学実績を伸ばしてきた常翔学園と東洋大姫路の新コース制も人気を集めそうです。両校とも手厚い面倒見が評判で、じわじわと人気が上昇してきたタイミングでの新コース制だけに期待感が高まっています。「上位コース」の併願日程については想定以上に難化するかもしれません。
いずれにしても新コース制の「上位コース」は予測が難しいので、確実な併願プランをとることをおすすめいたします。
PROFILE | 森永直樹(もりなが・なおき) |
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日能研関西 取締役。教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを経て2017年より現職。生徒への指導や保護者へのアドバイスを行うほか、私学教育、中学受験に関する講演などでも活躍。 |