京都の私立中学校数は大阪、兵庫に比べると少ないのですが、中学受験率(統一入試開始日午前の受験者数÷小6児童数)は関西圏で最も高く、常に10%をこえています。(2022年入試の関西圏の中学受験率は9.74%・日能研調べ)
人気の伝統校である洛星中学校(男子校)、難関の進学校である洛南高校附属中学校(共学校)、大学付属校の同志社(共学校)、立命館(共学校)がこの高い中学受験率を牽引してきました。
今回は近年の大学付属校人気でますます存在が注目される「同志社」と「立命館」の魅力と、今後人気が出そうな注目校を紹介いたします。
「同志社」と「立命館」の魅力
大学付属校として人気の高い両校ですが、2006年に併設の小学校が開校したこともあって、小学校入学時からの選択肢が増えた結果、一時的に中学入試での志願者数が減少しました。ただその期間は短く、以前より狙いやすくなると京都以外からの受験生が増えるようになり、順調に回復していきました。同志社にいたっては、名古屋からの受験生が増え、その動向が注目されています。
立命館については2014年の長岡京市への校舎移転により、兵庫や大阪からも通学が可能となり、学校の魅力が広く知られるようになりました。
また近年の中学入試は大学付属校ブームで、関関同立系の付属校の中でも「同志社」の系列校と「立命館」の系列校が人気です。「同志社」の系列校では同志社女子、「立命館」の系列校では立命館宇治が同じ京都にありますが、どちらもまた別の魅力を持つ系列校として注目されており、互いにいい影響を与える存在となっています。
実際の受験でも変化がおこっています。以前は、教育内容がかけ離れているわけではないのに「同志社」と「立命館」ではっきりと好みが分かれている印象で、受験の際にはどちらか迷うという感じではありませんでした。今では第一志望校をどちらにするのかということで比較されるケースが増えており、実際の受験の併願作戦では同志社系列と立命館系列の学校が入り混じることが多くなっています。入試日程で併願が可能になったことと、何としてでも両校の付属校に入れたいという家庭が増えていることがその要因です。
「同志社」と「立命館」の魅力は、素晴らしい教育環境で6年間学び、その後に同志社大学、立命館大学へ進学できるという点では共通していますが、その教育の中身についてはそれぞれの特徴があります。
「同志社」の魅力は、大学付属校にしかできない「教科の本質にこだわる学び」を実践しているところにあります。生徒を主体的な学びへと誘う環境が整い、「本物に触れる」体験や「心を揺さぶる」体験を重視したプログラムが数多く準備されており、入学してくる生徒たちへの大きな愛情を感じ取ることができます。
「立命館」の魅力は、大学付属校に期待される多くの要素を満たしているところにあります。キャンパス自体から多くのこだわりを感じます。様々な場面(授業・行事・クラブ活動など)でアクティブにチャレンジして欲しいと願いが込められており、充実した6年間を過ごすわが子の姿がイメージできます。
両校ともここでは細かな学校紹介はしておりませんが、一度学校を訪問して学校の魅力を肌で感じてみてください。
大学付属校そのものに魅力を感じていない方でも、中学受験を考えたらこの両校を見ることから始めることをおすすめします。数多くの私立中学の魅力に出会えるはずです。
注目校紹介① 「京都先端科学大学附属」
注目校紹介の1校目は京都先端科学大学附属(共学)です。
話題のSTEAM教育に力を入れている点と独自の探究型の学びを実践している点に注目しています。
京都先端科学大学附属が取り組むSTEAM教育は、特に「A」のアートに力を入れている点がユニークです。その芸術分野においては年に1回、中学全学年と先生方がひとつの作品を創る「中学生全員アート」や、美術・デザイン、写真、音楽、舞台、書道などの作品を生徒から募り、例年200を超える応募がある「アート・コンペティション」などの行事を開催しています。
「探究型の学び」ということでは、中学1年から3年まで週2時間、総合的な学習の時間を使い、「地球学」として地球環境保全や多文化理解、世界平和、表現力育成などについて学びます。中学1年では地元の深泥池をフィールド調査し、中学2年で農作業体験を実施。2年間で学んだことについては、中学3年の「地球学プレゼンテーション大会」で、まとめと発表を行います。系列大学に学部・学科のあるバイオサイエンスや健康医学なども「地球学」の学びの範疇です。
以上のような教育内容が評価され、中学入試でも第一志望として受験する家庭が増えています。東大をはじめ、国公立大学への合格者も増加傾向で、10年後のさらなる躍進が予想される学校です。
注目校紹介② 「京都橘」
注目校紹介の2校目は京都橘(共学)です。
面倒見の良い進学校で、大学進学実績を着実に伸ばしてきた学校です。注目しているのは、受験学力をしっかりとつけるこれまでの受験体制を維持しながら、これから社会に出てから必要とされる「課題解決力」を養う取組みなども積極的に行っている点です。進学校としての教育のバランスの良さで人気が上昇しています。
京都橘の探究型アクションプログラム「クエスト」への取り組みを紹介します。
企業から提示される課題をもとに、現実の社会と関連させながら、企業で働くことの意味や社会の課題についてグループで探究していきます。企業についての調査、企業からのミッション達成のための企画会議を経て、企画案のプレゼンテーションを作成。中間発表で振り返りを行い、企画・プレゼンテーションのブラッシュアップをはかり、ホールでの校内発表会に挑みます。クラス代表のプレゼンテーションを共有し、課題解決に向けた視点や工夫の発想を学び合うほか、協働的なグループ活動により、ファシリテーションについて基本的な考え方や方法を身につけていきます。「答えのない問い」に対して取り組むことによって、将来社会で求められる「生きる力」を養っています。
2022年の大学合格実績も人気を後押しする結果となっており、2023年入試では難化が予想されています。
PROFILE | 森永直樹(もりなが・なおき) |
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日能研関西 取締役。教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを経て2017年より現職。生徒への指導や保護者へのアドバイスを行うほか、私学教育、中学受験に関する講演などでも活躍。 |