コロナ禍での中学入試
近畿2府4県の中学入試(統一入試開始日)まであと2か月となりました。
2021年・2022年入試につづきコロナ禍での3回目の入試となりますが、新型コロナウィルスとインフルエンザの同時流行に備えた対応が求められていて、各学校においてはこれまでの2年間に準じた実施となりそうです。
具体的には、1教室あたりの受験者数や、付き添いの保護者の人数制限、塾への激励の自粛要請など、入試を実施することで感染が拡大しないような対策がとられます。
入試そのものの変更については、「面接」が中止になっています。これは接触機会を減らすという感染予防での判断で、関西学院のA日程での入試は3年連続で面接の中止が決定しています。
また多くの学校で、コロナに感染した場合(濃厚接触者となった場合も)の振替受験日が設定されます。
この振替受験の対象にインフルエンザの場合も適用されるかどうかが、各学校の判断になるのか、府県単位での方針決定となるかが気になるところです。
2023年入試の注目点
1. 受験者数はどうなる?
少子化の影響で受験者数が前年より187人減少(中学受験率は2年ぶりに上昇)した2022年入試と大きく状況は変わっていませんが、コロナが契機となり、私学志向が高まった結果、さらに中学受験率が上昇すると見られています。
よって2023年入試の受験者数は、ほぼ横ばいで2022年入試と同規模の約16,900人と予想しています。(関西圏の中学受験者数・日能研調べ)
各校のプレテスト受験者数はほぼ前年と同数か微増しているところが多いことから、昨年に続いて減少することはなさそうです。
2. 「安全志向」は続く?
2022年入試の最大のトピックは、トップ校が揃って受験者数を減らす結果となった安全志向でした。
コロナの影響で想定通りの受験勉強でなかったことからの、「無理をさせたくない」という保護者心理が影響したとみられています。この傾向が2023年入試も続くのかどうかに注目しています。
昨年の受験生よりは、コロナの受験勉強への影響は少なかったように思える点から、積極的に狙う動きが回復して、トップ校の受験生は増加すると予想しています。むしろトップ校に次ぐ上位校や人気校で、近年の難化の影響で受験を回避することも予想されるため、全体の動向も気になります。
3. 「関関同立」系の附属校人気は?
右肩上がりの人気が、2022年入試で一旦足踏み状態となったのが「関関同立」系の附属校です。大学附属校でも、トップ校と同様の「安全志向」のような動きがありました。
2021年入試で難化した同志社香里、同志社女子、立命館の3校です。
ただ2021年の勢いがなかったというだけで、受験者数そのものは多く、「人気の高さ」に変わりはありませんでした。
2023年入試ではどうなるのか。
10月や11月の公開模試の志望校登録の状況では、どこも好調で2022年入試を上回る勢いです。
大学附属校の中でも難度が高い「関西学院」や「同志社香里」は大きく受験生は増えないものの近年の人気をキープしており、レベルが高い入試になりそうです。
目立つのは立命館系列の人気の高さで、初芝立命館など連結コースをもつ学校も注目されています。やや難化しそうな気配があります。
その他の同志社や関大の系列校も難度に影響するほどではありませんが、受験者数は増えそうです。
4. 注目の「新型入試」は?
「新型入試」の傾向にも注目しています。
10年前から登場した「英語入試(英語資格入試)」と「適性検査型入試」は一般化しており、現在多くの学校で実施されています。
「英語入試」が未だに増加傾向にあるのに対して、「適性検査型入試」はやや減少しつつあります。
「適性検査型入試」は国立や公立中高一貫校の受験生の併願としては注目されていますが、そうでない受験生にとっては新たな対策が必要となるため、敬遠される傾向にあります。
そんな中で新型入試として注目されるのが「一科目選択入試」です。
得意科目を一つ選んで受験できる入試が増えています。
最も多く実施されているのが、首都圏でも流行した「算数一科目入試」ですが、ここにきて「国語一科目」も選択できるようになってきています。
また英語入試の多くが一科目入試だったことから、英語入試を実施している学校では「英・国・算」から一科目選択というかたちに進化しています。
得意科目だけで勝負できる入試は受験生にとっても支持されやすいので、今後も増加していくと思われます。
実際には一教科だけで選抜することは勇気のいる決断ですが、「その子の持っている長所をもっと伸ばしてやりたい」という学校の意気込みには賛同しますし、育てるという気概にも期待しています。
2024年入試にむけて
2024年入試に向けて、兵庫の私学で「共学化」と「コース再編」などの学校改革がすすんでいます。
滝川が2022年からの新コース制の発表から間髪入れずに2024年からの「共学化」を発表したことが他校にも影響を与えたと思われます。
新しい大学入試への対応や、これから先の時代に社会で求められる力をつけていくために、今まで以上に私立中高一貫校の教育のナカミが注目されています。新時代にむけた各学校の魅力ある変化に期待したいところです。
2024年入試にむけて様々な変化が今後予想されますので、しっかりとした情報収集をもとに、間違いのない学校選択へつなげてもらいたいと願っています。
PROFILE | 森永直樹(もりなが・なおき) |
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日能研関西 取締役。教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを経て2017年より現職。生徒への指導や保護者へのアドバイスを行うほか、私学教育、中学受験に関する講演などでも活躍。 |