受験に役立つコラム

中学入試での「お得校」とは!?

2023年10月18日
執筆:日能研関西 進学情報室 室長 森永 直樹氏

 

    コロナ前までは雑誌の中学受験特集などで特集されていた「お得校」とは、中学入試の偏差値と高校3年時の合格大学の偏差値の差が大きいところに注目するものでした。

 これらは進学校なら高3生の現役合格した大学の偏差値との差、大学附属校なら、生徒の多くが内部進学する系列の大学偏差値との差といった、「入口」と「出口」の差を見ています。

 また、「お得校」という言葉の意味通りにコスパの良い学校という見方をすると、塾いらずで大学受験が可能な学校や、サイエンスラボやラーニングコモンズといった教育環境が充実している学校などが考えられます。

 ここで「入口」と「出口」の差から見た「お得校」として、金蘭千里中学校と啓明学院中学校を、コスパの良さから見た「お得校」として、白陵中学校と大阪桐蔭中学校、帝塚山学院中学校を紹介いたします。

 

 

「入口」と「出口」の差に注目!

 

 金蘭千里中学校(大阪府吹田市)

 

 「入口」と「出口」の差で見た「お得校」としてこれまでも雑誌等で紹介されてきた進学校が金蘭千里中学校です。中学入試の難度のわりには、難関国立大学や医学部医学科に多数合格することから、データ的にも誰もが納得する学校で、今現在もその評価に変わりはありません。

 定期テストがないかわりに毎日の小テストが重視されるシステムで、日々の予習復習の徹底とその継続が大きな力となっています。

 着実に積み上げていく学習方法も時代とともに進化しています。生徒の自主的な学びをサポートするために「金蘭千里勉強部」というオンライン自習室が設置され、生徒に支持されています。

 入試の選抜方法でも他校に先じて「一教科入試」を採用し、やや極端であっても、その良さをさらに伸ばしながら6年間で育てていこうとする姿勢に共感が持たれています。

 

 啓明学院中学校(兵庫県神戸市)

 

 大学附属校での「お得校」は啓明学院中学校です。関西学院大学の系列校で内部進学率は90%をこえています。

 同じ系列校としては関西学院中学部(大学と同じキャンパス)が有名ですが、立地面や歴史の差などから、中学入試では啓明学院よりもかなり難度が高いのが現状です。

 また、他の関関同立の系列校と比較した場合でも「入口」と「出口」の差の大きさでは際立っており、附属校きっての「お得校」なのは間違いありません。

   啓明学院の教育内容は関西学院同様に、読書教育や国際教育が重視されており、大学進学後につながる力を養っています。

   また、無人島キャンプに代表されるアクティブな学校行事や盛んなクラブ活動で生徒たちは充実した6年間を過ごしています。

 

 

コスパの良さに注目!

 

 白陵中学校(兵庫県高砂市)  大阪桐蔭中学校(大阪府大東市)

 

 学校選びの際に、長期期間中の補講や放課後の特別授業が無料であることをコスパの良さと捉えるケースがありますが、ここでは6年間塾通いすることがなく、難関の大学を目指すことができる学校を「お得校」とします。

 学校の立地の問題もあるかもしれませんが、中学入学の段階から、しっかりと学校の授業(指導)を受けていれば、塾などに通うことなく大学受験ができることを断言している学校が、白陵中学校と大阪桐蔭中学校です。(私学の進学校の場合は、苦手科目だけ週1程度、高2から大学受験予備校の講座も受講というケースがほとんど。)

 「塾いらず」を実現するためには、授業のレベルの高さは当然ながら、生徒の意欲を引出し、その背中を押すことができる教師の力量が必要なだけに、これを受け継いできた学校独自の力がこの2校にはあると感じています。

 大きく捉えてこの2校をあわせて紹介していますが、そのアプローチには様々な特長がありますので、説明会や見学会で確認してください。

 

 

 帝塚山学院中学校(大阪市住吉区)

 

 抜群の教育環境という面での「お得校」は帝塚山学院中学校です。探究学習「創究講座」が評判で、生徒は主体的に学び、その先にすすむべき道を見据えています。

 探究学習を実践する場が大切との考えから「AQRIO」と「AQRIO+」といったラーニングコモンズを設け、生徒の学ぶ心を刺激してきましたが、昨年秋に「科学する心」を育てるサイエンス・ラボ「AQRIO*S」が増設され、理系分野においてもより深い探究ができるようになりました。

 注目すべきは「AQRIO*S」がきっかけで新たな高大連携が生まれたことです。同じ施設を持つ大学から直接指導を受けた時の生徒たちの学ぶ姿勢が評価されて、大学の研究室へ招待されることになり、想定以上の効果が早くも出始めています。

 このように環境の良さがやる気になった生徒の背中を押すこともあり、注目してほしいポイントの一つです。

 

PROFILE 森永直樹(もりなが・なおき)

日能研関西 取締役。
教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを経て2017年より現職。
生徒への指導や保護者へのアドバイスを行うほか、私学教育、中学受験に関する講演などでも活躍。

 

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