受験に役立つコラム

共学化ラッシュの兵庫私学

2024年8月21日
執筆:日能研関西 進学情報室 室長 森永 直樹氏

兵庫では女子校の共学化が話題になっています。今年(2024年)、男子校から共学になった滝川中学校に続き、2025年から親和中学校が女子校から共学へ、神戸山手女子中学校が共学化とともに「神戸山手グローバル中学校」へ校名変更します。さらに翌年の2026年には園田学園中学校が女子校から共学となり、3年で4校が共学へと変わります。

 

 2024年段階で兵庫の36校の私立中学校のうち男女別学が20校(男子校6校・女子校14校)と、男女別学が多い地域なので、これからも続く傾向なのかが注目されています。

 兵庫では2000年以降、今現在判明している2026年の園田学園までに10校が共学となっています。中でも2002年から2005年までに4校の共学の私立中学校が誕生した(啓明学院・神戸龍谷・須磨学園・滝川第二・・・共学化だけでなく中学新設を含む)時を第一次共学ラッシュとすると今回の4校のケースが第二次共学ラッシュと呼ばれるもので、さらにスケールアップする可能性も残されています。

 なぜ今、女子校の共学化が活発になっているのでしょうか。

 新しい時代にむけての学校改革は、「建学の精神」を現在化して解釈することが必要です。女子校の建学の精神には当時の時代背景が反映されており、女性の学ぶ自由や社会進出などを掲げているケースが多く、「今の時代に学校を開校するなら女子に特化していただろうか」という問いへの答えなのかもしれません。

 また共学になれば、募集対象が約2倍になるので、これから深刻化する少子化への対策というのが共学化がすすむ主たる理由であることはまちがいありません。

 

 ここからは2025年度から共学になる兵庫の2校を紹介します。

 

  • 親和中学校(兵庫県神戸市) ~名門復活へ開智学園との教育提携~

 今年で創立137周年の女子の伝統校の親和中学校が2025年から共学となります。共学となる背景は、現状の募集状況や今後の少子化への対策という面がありますが、進学校としての名門復活と教育の特色化をすすめることを目的としています。

男子生徒の募集をするので共学化としていますが、正確には「女子部」と「共学部」の併設という全国でも珍しい体制となります。

「女子部」と「共学部」では理数教育の推進等、同じ教育目的のもとで、それぞれの環境の違いで特色を持たせる狙いがあります。「女子部」では、これまでの女子校教育の良さをいかし、女性のリーダーシップの育成を、「共学部」では多様性を尊重する教育のもと、共に切磋琢磨しながらの成長を目指していきます。今後は男子トイレの改修やサイエンス教室の設置等、設備の充実がすすむとともに、ゾーニング(女子部と共学部の校舎分けとそれぞれの職員室設置)が行われます。

2コース制での定員はスーパーサイエンスコース60名のうち共学部の30名と女子部の30名、探究コース130名のうち共学部の100名と女子部の30名となっています。

共学化以外でも注目されるのが、今年度から文科省SSH指定校(スーパーサイエンスハイスクール)となったことです。これによって教育活動において様々な支援が受けられることになりました。具体的には、「課題研究」の強化や体系的な理科・数学の学び、国内外の先進施設や大学・企業の研究室への訪問研修などがあげられます。女子校として指定を受けたかたちですが、中学生だけでなく男子生徒についても支援の対象となっています。指定を受ける前から既にスーパーサイエンスコースにて理系重点化がすすめられていたので、今回の指定と共学化でより進化することが期待されています。

進学校としての名門復活への鍵となるのが、開智学園との教育連携です。親和のこれまでの経験に、開智学園の優れた実践(進学教育のメソッドや探究学習の高度化など)が加わります。既に教員の人事交流や研修が始まっており、共学化と同じくらいのインパクトの化学反応が起こっています。

 

  • 神戸山手グローバル中学校(兵庫県神戸市) ~ミライ志向のオンリーワン校~

 今年で100周年の神戸山手女子中学校が次の100年に向けた大改革として、2025年度からの共学化とグローバル化を発表しました。あわせて校名も「神戸山手グローバル中学校」に変更になります。激しい社会変化の中、ジェンダーレス化とグローバル化を軸に教育のあり方を検討し、インターナショナル・スクールな要素を持ち合わせた新時代対応の進学校というこれまでにないオンリーワン校を目指していきます。

 海外ルーツの子どももアジアを中心に積極的に受け入れる予定で、そのために学生寮以上の設備を整えている学生マンションも用意されています。日本語に慣れていない海外ルーツの子どもたちのために同時通訳イヤホンを活用し、数学や理科など、日本語では理解しづらい専門用語の多い教科も安心して受けられるよう準備がすすんでおり、早くもこの秋には中国から16名の転入生が入学予定です。

共学となるのが「グローバル選抜探究コース」です。このコースは学校のグローバル化を見据えて昨年にスタートしています。このコースでは、英語の授業は週10時間以上で、課外活動を含めるとインターナショナル・スクールに近いものになっています。担任は日本人とネイティブ教員の2名体制なのが特徴です。中1段階でリスニング力は、CEFRに換算するとほぼ全員が高校生レベルとなっており、留学経験がなくても英検2級に合格する生徒も出始め、早くも成果につながっています。

学習面以外では、今年度加入率が100%になった活発なクラブ活動も注目点です。インターハイ常連の陸上競技部の他にも、人気のeスポーツを含むデータサイエンス部や広報部に加え、今年は新しくスポーツクライミング部や中国語部ができています。クラブ活動も貴重な教育の場と考える同校らしさが伺えます。共学化・グローバル化でさらに盛り上がることでしょう。

PROFILE 森永直樹(もりなが・なおき)

日能研関西 取締役。
教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを経て2017年より現職。
生徒への指導や保護者へのアドバイスを行うほか、私学教育、中学受験に関する講演などでも活躍。

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