2025年入試は過去最高の中学受験率に!?
少子化がすすむ中で受験者数は横ばいという近年の傾向が続いたかたちですが、2024年近畿2府4県の中学受験率は10.17%となり、2007年(過去最高)・2008年(過去2番目)についで過去3番目の高さでした。
関西圏での私学志向の高まりは、新大学入試への対応や、将来のキャリア形成に向けた先進的な取り組みへの期待が大きく、難関校だけでなく私学全体に向けられています。
地域別にみると今年は大阪・京都で受験生が増加しています。特に注目すべきなのは大阪の受験者数です。3年連続の増加で3年前の2021年の7,443人から8,136人と693人の増加で、関西の中学受験の中心地です。大阪市内への高所得層の流入(タワーマンションの増加)などが大きな要因です。
大阪で注目されるのは、新しい高校授業料無償化(所得制限の撤廃)でより私学志向が高まっている点です。特徴のある私立高校の教育内容を見て、これなら中学から6年一貫で通わせたいと考える保護者が増えています。今年の受験者数にも若干の影響があったかもしれませんが、実際に表面化してくるのは来年以降の受験生からと見ています。大阪で実施されている合同相談会にはこれまでよりも多くの低学年層の保護者が参加しており、関心の高さがうかがえます。
2025年入試の受験者数は、ほぼ横ばいの17,300人から17,350人あたりと予想しています。大手進学塾で実施されている公開模試の受験者数からの推測なので、数読みが難しいライトな受験生(塾に通わない受験生)が増加すればもう少し増える可能性もあります。中学受験率の上昇は確実で、過去2番目より高い数字になるのかに注目しています。
2025年の入試動向について
次年度入試の動向については、「難関校」・「大学附属校」・「ライトな受験生」に着目しました。
難関校の動向については、今年と比べて大きな変化はないと見ています。2023年入試より、安全志向から従来の「強気の受験」に戻ってきたことから、灘を筆頭に東大寺学園など他地域からも受験生がいる男子の難関校は多くの受験生が見込まれます。それ以外では、超人気校の高槻(女子は既に難関)や大学進学実績が躍進した須磨学園が、難関校に近い存在として、どこまで難度が難関校に肉薄するかに注目しています。
大学附属校については、今年は人気が高止まりの状態でしたが、同じ状況が続くと予想しています。ただし、関関同立の継続校の中では隔年現象の傾向があるので、今年減少した関大系列などは、比較的ねらい目となる学校なので、増加に転じるかもしれません。大学への連結コースをもつ人気の初芝立命館は校名を「利晶学園大阪立命館」と変更したことで注目度が上がっているので、志願者数増だけでなく、難化しそうです。
ライトな受験生(少ない準備期間で受験/塾に通わずに受験)については大阪で増加すると見ています。前でも触れていますが、新しい高校授業料無償化によって私学への関心が高まっている中で、子どもが高学年になってから決断されるケースあるからです。入試も多様化しており、自己推薦入試や1教科入試などがこの流れを後押ししています。ライトな受験生の特徴は、「教育環境の良さ」と「面倒見の良さ(目が行き届いている)」を学校選びのポイントとしているところなので、学校は入試の選抜方式とあわせてこのあたりをPRできれば、この層に支持されるかもしれません。
最後に2025年入試で私が注目している2校を、その注目ポイントとあわせて紹介します。
2025年入試の注目校
[大阪桐蔭中学校 -新コース-]
統一入試開始日に入試を実施しないこともあって、難関校の併願校として注目されていますが、大学受験にむけて「塾要らず」の姿勢が評価され、熱烈な第一志望者がいる学校としても有名です。
2021年に発足したエクシードクラス(Ⅰ類から選抜された高校からの入学生最上位のクラス)の1期生が素晴らしい大学合格実績を残しました。京都大学8名、大阪大学1名、神戸大学6名など国公立大学に19名合格しています。
そこでこのノウハウを中学からの入学生にも繋げていこうという狙いで、中学校に新コースが誕生します。これまでの2コース(英数選抜コース/英数コース)に加えて最上位の位置づけで「プロシードコース(1クラス35名)」が新設されます。難度的にも高い設定となることから、最難関校からの併願が増えると予想しています。
[箕面自由学園中学校 -新コース-]
高校の躍進ぶりが目立つ箕面自由学園ですが、いよいよ中学校の改革が本格的に動き出します。高校は大阪府で一番を争うほど志願者の多い人気校で、「生徒を主役」に、成りたい自分を見つけた生徒を教師が全力で応援するスタイルが支持されています。それが大学合格実績にも表れており、2024年の実績ではついに東大の合格者が出たほか、2年前との比較で国公立大学の合格実績が約2倍の159名に、関関同立の合格実績も約2倍の472名と大躍進しています。
そのきっかけとなったのが、高校で新設された「SS特進コース」の成功です。期待感をもって入学してきた生徒を3年間育てた結果の大躍進だけに学校が得た自信はかなり大きなものとなっています。
そして中学にもこの経験をいかそうと、これまでのコースの最上位の位置づけで「理数探究コースS」が新設されます。また募集においても「特待制度」が拡充されるようで、ここにも学校の本気度を感じています。高校の上位コースの難度が上がっているので、中学人気に確実につながるものと見ています。
PROFILE | 森永直樹(もりなが・なおき) |
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日能研関西 取締役 教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを経て2017年より現職。 生徒への指導や保護者へのアドバイスを行うほか、私学教育、中学受験に関する講演などでも活躍。 |