☆中学受験率が過去最高値を更新!!
今年の近畿二府四県の統一入試開始日(1月18日)の午前の受験者数は17,583人で昨年より271人増加しました。実数として3年連続の増加は2000年以降初めてのことです。
今年度の小学6年生の児童数は167,125人で昨年より3,160人減少していますが、2025年入試の中学受験率は昨年の10.17%から跳ね上がり、10.52%に上昇。これまでの最高値の10.47%(2007年)を超え、過去最高の受験率となりました。
地域別では、兵庫と京都の減少分を大阪の増加分が大きく上回った結果、全体での増加となっています。(その他の地域はほぼ横ばいとなっています。)
日程別の入試回数は、大きな変化はなく午後入試が前半に集中することもあり、初日と二日目の入試回数は全体の約71%となっています。関西エリアでは全体として一週間近く続く入試日程ですが、実質2日間の超短期決戦の入試に変わりはありません。
関西で中学受験への注目が高まっている要因の一つが、大阪府で昨春から段階的にスタートした高校授業料無償化です。所得制限が撤廃されたことで大阪府民全体が対象となり、高校の授業料が実質無料となるため、これまで私学を選択肢に入れていなかった家庭も私学進学に目を向けるようになりました。
2025年入試では大阪では昨年より約500人増加と急増しており、全てのレベル帯の学校で増加していることから無償化による影響が大きいと思われます。その裏付けとして、大阪から他府県への受験生減少が昨年より大きくなっています。また近年、大阪市内への高所得層の流入が増え、大阪の中学受験率は過去最高を記録しています。合同相談会にはこれまでよりも多くの低学年層の保護者が参加しており、この傾向がしばらく続くことが予想されています。
☆入試動向(2024年入試からの変化)
―難関進学校―
全国最難関の灘の志願者数は734人で、昨年から4人減少するも3年連続で700人を超え、実質倍率は2.91倍と高水準を保っています。2021年より続いていた首都圏からの灘志願者増加は一旦落ち着き、昨年より12人減の163人でした。
その他の統一入試開始日午前に入試を実施している難関校の志願状況を昨年との対比で見てみると、洛星(8人減)、甲陽学院(52人減)、大阪星光学院(46人増)、神戸女学院(20人増)、四天王寺(28人増)となっており、大幅に増加した昨年から横ばいという状況です。
近年の関西圏の難関校(灘・東大寺学園・甲陽学院・大阪星光学院・洛星・神戸女学院・四天王寺・洛南高校附属・西大和学園の9校)の入試難度が徐々に二極化しています。今年の結果から見ても、その傾向が強まっています。具体的には、男子では「灘・東大寺学園」と「その他」、女子では「西大和学園・洛南高校附属」と「その他」の難度差は広がっています。
このような状況に、2017年の共学化・教育改革以降、志願者数が増え続け、難化傾向が続く「高槻」が上記の9校に迫る勢いです。女子は既に神戸女学院に並ぶレベルになっていましたが、今年は男子の志願者数が増えたこともあり、この9校の枠に入ってきています。
―大学附属校―
中学受験率の上昇とともに大学附属校は右肩上がりとなり、直近過去2年はその人気は高止まりとなっていましたが、2025年入試では再びその人気に火がついています。統一入試開始日午前では関大第一(135人増)、立命館宇治(38人増)、近畿大学附属(44人増)、龍谷大平安(22人増)等、その人気は関関同立系にとどまらず、産近甲龍の系列校にまで及んでいます。大学への連結コースを持つ利晶学園大阪立命館は校名変更もあり、注目度を上げていました。結果として総志願者数263人増と入試も難化しました。
☆2025年入試の注目校
―大阪桐蔭―
最上位のプロシードコース新設が話題になっていた大阪桐蔭は全ての入試で志願者数が増加しました。(志願者の総数は昨年の920人から1,253人まで増加)プロシードコースへの期待が高く、難関校からの併願が多くあり、高難度の入試となっています。また最上位コースに引っ張られるかたちで他のコースもやや難化しており、次年度も注目です。
―箕面自由学園―
今年の大学合格実績の躍進で注目される中、コースを再編して最上位コースを「理数探究コースS」としました。コースの魅力に加え、生徒の「自主性が育つ指導」が共感を得て、志願者の総数は昨年の238名から395名と増え、昨年の2倍の入学者数となっています。高校入試での人気が高く、中学から入れておいたほうがいいと考える保護者も増えているようです。大阪桐蔭と同様に次年度もこの人気が続きそうです。
―親和・神戸山手グローバル―
今年共学化で注目された兵庫の2校。結果としてはともに共学志望の女子に支持され、志願者数を増やしました。特に神戸山手グローバルは昨年の約2倍の志願者数となり、ユニークな教育内容への期待がうかがえます。女子校からの共学化なので、初年度は男子の受験生が躊躇した感じはありますが、次年度以降からは徐々に増えてくるでしょう。共学化一期生の活躍が楽しみです。
PROFILE | 森永直樹(もりなが・なおき) |
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日能研関西 取締役 教室長、進学情報室室長、教室統括部長などを経て2017年より現職。 生徒への指導や保護者へのアドバイスを行うほか、私学教育、中学受験に関する講演などでも活躍。 |